松川浦特産のアオサを世界に 処理水放出にEU輸入規制撤廃 福島県の水産業復興へ注目される今がチャンス (23/12/28 16:00)

原発処理水

福島第一原発の処理水の海洋放出があった2023年。福島県の水産業は、EUの日本産食品の輸入規制撤廃など、明るい話題もあった。世界から注目されることは「チャンス」と語る相馬市の食品会社の社長。震災から続けてきた着実な歩みで、水産業の復興を進めようとしている。

<輸入停止と輸入規制撤廃>
12月、福島県相馬市・松川浦の特産品である「アオサ」の漁が始まった。東日本大震災の影響で漁が出来ない時期もあったが、6年前からアオサ漁を再開している。
2023年は、水産物を巡る環境が大きく変わった一年となった。8月には処理水の海洋放出が始まり、これを受けて中国は日本の水産物の輸入を全面的に停止。一方、同じく8月にはEUが原発事故後続けていた日本産食品の輸入規制を撤廃した。

<第一歩 オランダへ輸出>
アオサの加工・販売を手がける相馬市の「マルリフーズ」は、10月にEUに加盟するオランダへ冷凍のアオサを輸出した。稲村利公社長は「震災後、色んな形で気を付けてやってきたのが、やっと認められたのかなと。第一歩ですね」と語る。

<被災・風評 多くの困難>
稲村社長は、数多くの逆境に立ち向かってきた。東日本大震災では、約2.5メートルの津波で工場は全壊。工場は一年で再建、ほかの産地のアオサを加工することで業務を続けようとしたが「最初の何年かは福島というだけで拒否される。そういうのは実際あった」と稲村社長は振り返る。

<初挑戦 EUへの輸出>
できることから一歩一歩、業務を再開させたマルリフーズ。2018年からは松川浦でとれたアオサの加工ができるようになった。
復興をさらに進める上で着目したのが、海外への展開。これまで、タイやオーストラリアなどでの取り引きがあるが、EUへの輸出は新たな挑戦になる。稲村社長は「少しでも広まって認知度が上がれば、ふくしまの復興にも繋がる。もう一つはここ相馬の地域の復興にも繋がるのかなと」と話す。

<外国人バイヤーにも好評>
2023年12月8日、アメリカにカナダなど海外のバイヤーが訪れた。一行は養殖場や工場を視察し、アオサの加工食品を試食した。定番とも言える「アオサの味噌汁」に「アオサの佃煮入りのおにぎり」さらに、アオサを身近に感じてもらおうと様々な食べ方を提案。オイル漬けをクラッカーに載せて食べた。
カナダからきたバイヤーは味噌汁を味わい「食感がすごくいい」と話し、アメリカからきたバイヤーは「佃煮、抜群においしいですよ」と話した。

<今がチャンス!>
震災に原発事故、そして処理水の海洋放出。取り巻く環境は今も厳しい状況が続いている。しかし、稲村社長は「逆に今がチャンスじゃないかと。処理水の関係で注目されていると、その中から物が出ていくことで、良いものだってことで認識してもらえれば、漁業者の今後も前向きな形でいけるのではないかな」と注目されている今だからこそ「復興に繋げたい」と考えている。

未だに復興途上の福島県の水産業。関係者の、地道な取り組みが実を結ぼうとしている。

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