東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が始まってから、24日で1年となった。総放出量は7月時点で5万4734トンに上るが、周辺海域の放射性物質のモニタリング(監視)で異常はなかった。放出に伴い中国やロシアが日本産水産物の輸入を全面停止したほか、香港、マカオも東京や福島など10都県の水産物や生鮮食品の輸入を停止しており、政府は引き続き、撤廃を訴えていく方針だ。
2011年3月の原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を水で冷却する過程で、高濃度の放射性物質を含む汚染水が発生する。多核種除去設備(ALPS=アルプス)を使い、汚染水からトリチウム(三重水素)以外の大半の放射性物質を取り除いた処理水を、敷地内のタンクに貯蔵してきた。
ただ、貯蔵量が限界に近付き、タンクの増設場所の確保も難しいことから、菅 義偉 よしひで 首相(当時)は21年4月、「モニタリングが確実かつ安定的に実施できる」として処理水の海洋放出を表明。東電は昨年8月24日、放出に着手した。
東電によると、処理水は毎回約7800トンを19日間かけて放出している。今年7月までの7回で25メートルプール145杯分に上り、今月7日から8回目が行われている。周辺海域のトリチウム濃度は1リットル当たり最大29ベクレルで、世界保健機関(WHO)の飲料水基準(1リットル当たり1万ベクレル)を大きく下回った。
国際原子力機関(IAEA)は1、7月、いずれも「国際的な安全基準に合致しない点は確認されなかった」とする報告書を公表した。
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