石丸伸二 少子化対策 緩慢な大災害

少子化対策

6月19日の日本記者クラブでの都知事候補(予定)者共同記者会見大喜利大会だが、冒頭のフリップネタの後の最初のお題は少子化対策だった。それでは、各候補から簡単に15分ずつご意見をいただけますか?というような流れになるかと思いきや、制限時間は1分間、さあどうぞ、というとんでもないルールで、各候補まったく内容の伝わらないつぶやきのようなお話をされた中、元軍人(注)の田母神俊雄氏は、少子化という敵と対峙した場合に、とりあえず敵と戦うための手立てとして、子どもが生まれたら第一子いくら、第二子いくら、とカネを渡せば良い、と金額まで含めて作戦を立てて発表したのはさすがだった。

(注)日本に軍人はいない、というのが日本国憲法上の建前という議論があるが、これは憲法の不備なので憲法を変えるべきであり、自衛隊という軍隊が存在し、自衛隊員という軍人が存在することは現実である。

正面の敵と戦うのは軍人の務めだが、敵が遥か遠くにいる場合、戦わずして勝つ方策を立案、実行するのが政治家の務めであり、この場合、少子化問題という遠大な課題に政治家としてどのように向き合うかが、本来の回答であるべきだっただろう。

少子化はリアルな政治課題だ。そこに少子化、人口減少の先進的な地域である消滅可能性自治体の首長を最近まで務めておられた石丸伸二氏がいるのだから、ここは東京都民ではなかなか気付けない少子化の恐ろしさ、対処法、などについてじっくり聴きたいところだった。1分間ルールによってその機会をつぶされたのは大変残念である。

子どもを何人生むかは、まったく当人たちのみに委ねられた問題ではあるが、少子化は社会のあり方への影響力が甚大である、という点で、うまく対処できない場合、極めて大きな被害をもたらす災害となる。

例えて言うと、毎月1cmずつ海面が上昇するような種類の津波である、と見ることができる。気が付かれにくいけれども、一年で12cm、十年経つと1m20cm、二十年経つと2m40cmの高さの海面上昇があるのだから、社会としては必ず対処しておかないと、じんわりとボディーブローを食らって、最終的にはノックダウンされる危険もある。

自動車の運転では、どこを見ながら運転するかと言うと、教科書的には100m先を見て運転しろと言われる。その地点は、自分のクルマが3秒後あるいは4秒後に通過する地点だからだ。そこをまったく見ないで進んでしまうと、よけてもよけきれなかった大事故になる可能性もある。

先を見越して対処しておく、というのが良い政治の特徴である。したがって、少子化という長期的な課題に対し、問題意識を持っているのかいないのか、という基準で政治家の資質を比較できたら、有権者としてはありがたい。ただ、日本記者クラブに所属するような低レベルのメディアにそれを期待しても無理だったので、そのあたりは、有権者が自発的に研究するしかないだろう。

石丸伸二 少子化対策 緩慢な大災害

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