【キャスター】
「数字で見る佐賀」のコーナーです。
今回は、10月1日から始まる「インボイス制度」について。担当は川浪さんです。
【川浪沙貴記者】
よろしくお願いします。
「インボイス制度」とは消費税に8%と10%の2つの税率があることを受け、これまでの請求書や領収書に“新しい情報”を加えることで税金を正確に把握する仕組みです。
【キャスター】
新しい情報って?
【川浪沙貴記者】
こちらをご覧ください。一般的な請求書がこんな感じだとします。
そして、変更後がこちら。新しく加わるのが、「Tで始まる登録番号」と「税率ごとの消費税額」です。少しの変化ですが、売り上げ1000万円以下の事業者は大きな判断を迫られています。
【税理士 佐野康隆さん】
「今まで使っていたものが全然使えなくなるわけではない。ただ、適格請求書(インボイス)がないと、それを受け取った側が消費税の負担が重くなってしまうし…」
制度の導入を前に、県内でも各地で説明会やセミナーが開かれています。
参加した事業者からは、不安や戸惑いの声が聞かれました。
【製造業事務50代】
「実際、10月1日になってみないとわからない。ちょっと不安」
【自動車修理業40代】
「インボイスに登録したら今より負担は絶対出てくるから、そこをどう対応できるか」
【川浪沙貴記者】
困惑の声も多いのが実情ですが、ここで具体的な取引の例をあげていきます。
まずは、現在の流れです。
例えば、私たちが酒店で3300円のお酒を買った場合、お店は300円の消費税を受け取っています。
ただ同時に、お店はこのお酒を仕入れるときに業者に消費税を払っています。
1100円で仕入れたなら、100円の消費税です。
その結果、「国への納付額」はそれぞれどうなりますか?
【キャスター】
業者が「100円」、酒店はすでに100円を業者に払っているので「200円」を納付することになりますね。
【川浪沙貴記者】
その通りで、業者が100円、酒店が200円、合計300円を納付することになります。
しかし、この業者が売り上げ1000万円以下の場合、「免税事業者」となり、現在は消費税の納付が免除されています。
つまり、この例でいうと国への納税額は200円となります。
ただ今後は、インボイスに登録するとこの業者が「課税事業者」になり、消費税を払わなければいけなくなるんです。
【キャスター】
売り上げ1000万円以下の免税事業者にとってはこれまで払っていなかった税金を払う形になるので、メリットが無いように感じますね。
【川浪沙貴記者】
そこが大きな懸念点です。インボイスの登録は任意なので、免税事業者は、インボイスに登録せずこれまで同様に税の免除を受けてもいいんです。
ただ、今後はその分の消費税を“お店側が肩代わり”することになるため、取引が打ち切られる懸念もあります。
【小物販売業など】
「取引相手から“登録しましたか?”と問い合わせがあり、どうしようかと思い」
県内では8月末時点で、課税事業者の84%にあたる約1万6000の事業者がインボイスに登録しています。
一方で、これまで税の免除を受けていた免税事業者の登録は約4000件と、推定される全体の67%にとどまっています。
県内でも、負担が増えることでインボイスの登録に悩む事業者がいるのが現状です。
【佐賀税務署 谷修良筆頭副署長】
「免税事業者は必ずしも登録することだけが制度対応ではなく、ご自身の事業形態を含め制度をよく理解し、まずは登録要否の判断を適切に行っていただくことが重要」
【キャスター】
インタビューにありましたが、事業形態によってはインボイスに登録する必要が無そうな場合もあるんですね?
【川浪沙貴記者】
例えば「個人経営の美容院」の場合、顧客のほとんどは美容目的の人で、業者との取引はほとんどありません。なのでインボイスを求められることがあまり無いと思います。
【キャスター】
確かに、美容院代の領収書をもらって会社の経費で落とす…というのはほとんどないですよね。一方で、業者との取引がある小規模な事業者からは「税の負担が増える」と反対の声が上がっていますよね。
【川浪沙貴記者】
岸田総理は29日、10月取りまとめる経済対策で“小規模な事業者への支援策”を盛り込む考えを示しましたが、不安がどこまで払しょくできるかは不透明です。
【キャスター】
インボイスの登録は事業者の任意で、登録する場合は、インターネットか書面で税務署に申請書を提出する必要があるということです。
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